Claudeによるマネジメントをちょっと楽にする方法
マネージャーになってから、担うべき役割がどんどん増えています。
ピープルマネジメント、プロジェクトマネジメント、組織マネジメントの3つを同時に担いながら、「ボールが落ちそうなものは自分で拾う」という姿勢で開発にも関わり続けています。やること、考えること、判断することが多すぎて、自分の頭だけでは追いつかなくなってきました。
そんな中で「自分の分身が欲しい」と思い、Claude(AI)を活用する仕組みを作ってみました。完全に自分の代わりになるわけではないのですが、「ちょっと楽になった」という実感があるので、その仕組みをご紹介したいと思います。
注意
- 執筆に当たり細心の注意を払っておりますが、不十分な説明や誤りがある可能性もございます。
- 本発言はあくまで私個人の意見・見解であり、所属する会社等の公式な立場や見解を示すものではございませんので、あらかじめご承知おきください。
マネージャーが担う3つの領域と「もう1つ」
私が現在担っているマネジメントの役割は、大きく以下の3つです。
ピープルマネジメント
メンバー一人ひとりの成長と状態を見ていく領域です。1on1でのキャリア相談や悩みの傾聴、フィードバック、評価など、人に向き合うことがメインになります。
プロジェクトマネジメント
複数案件の進捗管理、スケジュール調整、リスクの洗い出し、ステークホルダーとの調整など、事を前に進めることがメインになります。
組織マネジメント
体制設計、VMV(ビジョン・ミッション・バリュー)の策定と浸透、採用、メンバーの配置など、組織そのものを強くしていくことがメインになります。
もう1つ:開発もまだ離れられない
「プレイングマネージャー」という言葉がありますが、私もその一人です。ボールが落ちそうなもの、誰も拾えないものは自分で手を動かして対応しています。完全にマネジメントだけに集中できているわけではありません。
このような状況で日々を過ごしていると、1日の中で判断しなければならないことの量が膨大になります。
全部に100点出し続けるのは、自分の頭だけでは限界がある
3つの領域それぞれで高いパフォーマンスを出し続けるためには、それぞれに十分な情報と思考が必要です。ところが現実には、こういった場面が頻発します。
- 1on1の直前に「前回この人とは何を話したっけ?」とメモを掘り返す
- 会社の方針変更を受けて「私たちチームの方向性って変えなくていいっけ?」と自問する
- フィードバックの場面で「この人の良かった点、もっとこうしてほしい点、ちゃんと整理できているかな」と不安になる
- 定例の前に「前回の決定事項、ちゃんと拾えてるかな」と確認に追われる
個々の判断は大したものではないのですが、これが毎日積み重なると、じわじわと疲弊してきます。特に1on1は毎週複数名と実施するため、一人ひとりの文脈を毎回引き出すだけでもそれなりにエネルギーを使います。
考えることが増えてくると、瞬発的な意思決定が雑になってきます。よく確認せずにOKを出してしまい、後から詳細を見て「あれ、これだと問題あるんじゃないか」となってしまうことがしばしば。その度にメンバーに謝って対応を変えてもらう、というのが続くと、それだけで組織の雰囲気やメンバーのモチベーションを下げかねません。
とはいえ、仕事量を単純に減らすだけでは、せっかく与えてもらったチャンスを活かしきれません。
ではどうするか。「もう一つ頭を用意すればいいのでは?」と考えました。
Claudeで「頭を二つ」にする
そこで考えたのが、Claude(AI)を「もう一つの頭」として使う仕組みです。
完全な分身にはなれません。「この人の本当の状況」を知っているのは自分だけですし、人間関係の機微や組織のセンシティブな話題をAIに全部任せることも適切ではありません。
ただ、「ちょっと楽にする」という目標なら十分に達成できると感じています。
具体的にどんな場面で助かっているかというと、以下のような使い方です。
1on1の前準備
「今日○○さんと1on1なんだけど、前回こういう話をしたイメージで、今回どういう話をするのがいいと思う?」という形で相談します。
前回の話した内容のイメージ(後述するように架空化・抽象化したもの)を渡すと、「それなら今回はこういう切り口でどうでしょうか」という提案が返ってきます。全部採用するわけではありませんが、アジェンダを考えるたたき台として非常に役立ちます。
組織方針の壁打ち
「会社全体としてこういう方向性が決まったんだけど、私たちのチームの今の方向性って変えなくていいよね?」という形で壁打ちします。
チームのVMVのイメージを渡した上で質問すると、「整合性があると思います。ただこの点だけ少し確認した方がいいかもしれません」のような返しが来ます。自分だけで考えていると見落としがちな視点を補ってくれます。
フィードバックの整理
「このメンバーはこういう場面でよかった、こういう場面ではもっとこうしてほしかった、というfactがあるんだけど、フィードバックとしてどう整理すればいい?」という形で使います。
自分の中にバラバラにある観察をClaudeに渡すと、「Good:〇〇、Motto:〇〇、伝え方の例:〇〇」という形に整理してくれます。フィードバックの準備にかかる時間が大幅に短縮されました。
実際に何を記録しているか
上記のような使い方ができるよう、Claude Code のskillとして以下の情報を記録する仕組みを作りました。
- 1on1ログ(いつ・どういう話をしたか)
- 定例ログ(決定事項・次のアクション)
- 組織体制のイメージ
- VMV
- メンバーのGood/Mottoポイント(fact)
使い方のイメージ
実際の使い方として、以下のような流れになります。
- 情報をskillで記録する:1on1や定例の後、架空化した形で要点をメモしておく
- 必要なタイミングで聞く:1on1の前、方針を判断する前、フィードバックの準備前
- 提案を参考にする:全部採用するのではなく、あくまでたたき台として活用する
「完全に任せる」ではなく「一緒に考える」という使い方が、今のところ一番うまく機能しています。
限界と正直なところ
この仕組みには当然限界もあります。
まず、個人情報を含めないため、Claudeが返す提案は抽象度が高くなります。「一般的にはこういうアプローチが有効」という答えに留まることが多く、「この人だからこそのアドバイス」というレベルには届きません。
また、最終的な判断は必ず自分で行う必要があります。Claudeの提案はあくまで「選択肢のたたき台」であり、「正解」ではありません。人間関係やチームの文脈を一番知っているのは自分です。
1on1をやっていても、気づけば業務の話だけで終わってしまうことは皆さんもありますよね?もちろん私もそうなってしまいがちです。ただ、「1on1前に何も準備できていない」状態から「たたき台を持って臨める」状態になるだけで、会話の質は確実に変わります。フィードバックの言語化に悩む時間が短縮されるだけで、他の仕事に使える余裕も生まれます。
「完璧な分身」ではなく「ちょっとだけ賢いメモ帳兼壁打ち相手」くらいの位置づけがちょうどよいと感じています。
まとめ
マネージャーとして複数の領域を担いながら開発にも関わり続ける中で、「頭を二つにしたい」という発想からClaudeを活用する仕組みを作りました。
やっていることは特別なことではなく、「情報を架空化して記録しておく」「必要なタイミングで聞く」「提案を参考にして自分で判断する」という3ステップです。
完全な分身にはなれませんが、「ちょっと楽になる」だけでも、毎日の積み重ねとしては大きな差になります。
同じような悩みを持つプレイングマネージャーの方の参考になれば幸いです。