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日本はオンチェーン金融のどこに賭けたか——自民党PT提言から読む国家戦略の設計図

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日本はオンチェーン金融のどこに賭けたか——自民党PT提言から読む国家戦略の設計図

日本はオンチェーン金融のどこに賭けたか——自民党PT提言から読む国家戦略の設計図

こんにちは。ブロックチェーン×AI Agentで自律経済圏を創るKomlock labでVPoEをしている阿部(@takupeso)です。

2026年5月19日、自民党が「次世代AI・オンチェーン金融構想PT」の提言を最終決定しました。全13ページの原文PDFを読み込み、日本がブロックチェーン×AIで何に賭けようとしているのかを整理します。

「提言」とは何か——これで何が変わるのか

自民党政務調査会デジタル社会推進本部「次世代AI・オンチェーン金融構想PT」(座長: 木原誠二)が提言を最終決定しました。

提言の位置づけ:

与党(自民党)の議員グループが、金融庁・日銀・財務省などの政府機関に対して「こうすべき」と要求する文書です。法律ではありません。流れとしては「PT提言 → 骨太の方針に反映 → 閣議決定 → 各省庁が実行」となります。与党提言が骨太の方針に入れば予算がつき、省庁は動かざるを得なくなります。

これで何が変わるか:

  • 金融庁・日銀・財務省に「年内」「年度内」の期限付きで検討・整理・公表が求められます
  • 骨太の方針(2026年6月頃閣議決定)に盛り込まれれば、予算措置と省庁間連携が正式に動き出します
  • 3メガバンク共同SC発行、国債トークン化、証券決済24/365化などの個別プロジェクトに政治的後押しがつきます

これで何が変わらないか:

  • 提言自体に法的拘束力はありません。省庁が「検討した結果、見送り」とする可能性はゼロではありません
  • 法改正が必要な項目(銀行発行SC、給与のSC払い等)は、別途国会での立法プロセスが必要です
  • 民間企業や個人に直接義務を課すものではありません

日本の賭け先① — トークン化預金(TD)を軸にした24/365決済

TD(Tokenized Deposit): 銀行預金をブロックチェーン上のトークンとして表現したもの。預金債権としての法的性質を維持しつつ、プログラマブルな処理が可能になります。

提言が求める内容:

  • 日銀当座預金のトークン化対応。ホールセールCBDC(銀行間決済に限定した中央銀行デジタル通貨)を含みます。年内に論点整理・実現に向けた道筋を公表するよう日銀に要請
  • TD発行銀行をまたいだTD移転の実現。ファイナリティ(決済の最終確定性。取消不能な状態)の確保が前提です
  • スマートコントラクトを活用し、商流・物流と連動するTDプロダクトの開発・提供
  • 預金取扱金融機関の業務範囲規制や資本構造の在り方の見直しを含めた検討
  • 年内に業界で結論を得て公表すること

提言によると、全銀ネットは毎日850万件を処理しています。提言はパブリックブロックチェーンでの大量処理の迅速性に限界があることを認め、既存システムのブロックチェーン置き換えは「必ずしも必須ではない」としています。

日本の賭け先② — 円建てステーブルコインによる通貨主権の確保

SC(Stablecoin): 法定通貨等に価値を連動させたデジタル資産。ドル建てのUSDT/USDCが代表例。

背景として、USDT/USDCの時価総額は45兆円規模に拡大しています。提言はこれを放置した場合の外国決済依存を経済安全保障リスク・通貨代替リスクとして位置づけています。

提言が求める内容:

  • SCでの給与支払い・納税・会社への出資の可否を年度内に省庁横断で検討
  • 銀行発行SC: 資金決済法上は禁止されていないが「慎重な検討」とされてきた経緯がある。バーゼル規制上の取扱い・預金保険との関係を年内に整理
  • 円SCとドルSCのシームレス交換を実現する「グローバルSCコリドー構想(仮称)」を各国当局間の対話から開始
  • リスク対応: AML/CFT(本人確認した者のみ利用を認める枠組みの提案あり)、量子コンピュータ耐性、外為規制潜脱への対応

日本の賭け先③ — 国債・証券のオンチェーン化(T+0)

RWA(Real World Asset)トークン: 国債・株式・不動産など現実世界の資産をブロックチェーン上でトークン化したもの。T+0は約定日当日決済を意味する(現行は株式がT+1、国債がT+1)。

提言が求める内容:

  • 東証の年間売買高1,600兆円をアセットサイドのオンチェーン化でT+0対応
  • 国債のトークン化対応。JBICトークン債発行を起点とする
  • GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)にトークン債投資枠を設定。年度内に内閣官房・財務省・厚労省・金融庁で検討
  • 証券決済の24時間365日対応をブロックチェーン上で推進(PIP内で検討)

日本の賭け先④ — AIエージェント×金融のルール整備

提言はAIエージェントが経済活動を自律的に実行し、商取引が迅速・高頻度・グローバルに行われる「エージェンティック・コマース」の到来を前提としています。AIを「経済主体」として扱い、金融価値を保有・展開できる新たな主体としました。

金融分野でのAIに対する論点:

  • AIによる独立・自動的な取引判断・指示が進む状況への対応
  • 特定AIへの過度な依存による市場の一方向への不安定化リスク
  • 銀行の融資判断でのAI活用において特定業種等が排除されないよう金融包摂の観点からの検討
  • 金融庁で早急に検討・整理すべきとの要請

本人確認については、マイナンバー+生体認証+VC(Verifiable Credential: 検証可能なデジタル証明書)の組み合わせの有用性がFinTech実証実験ハブで確認済みです。エージェンティックAI時代の本人真正性の基盤として位置づけられています。

何を「しない」と決めたか

提言が積極推進の対象としなかった領域:

領域提言での扱い
リテールCBDC(一般国民向け)「将来的な選択肢の1つ」止まり。ホールセールCBDC(銀行間決済用)に集中
パブリックBC全面置換全銀ネット850万件/日の処理を考慮し「置き換えが必須とまでは必ずしも言えない」と明記
DeFi(分散型金融)直接言及なし。規制対象としても推進対象としても触れていない
暗号資産(BTC/ETH等)直接言及なし。SC・TD・RWAトークンの世界に限定

期限付きロードマップ一覧

期限担当アクション
2026年内日銀ホールセールCBDC対応の論点整理・実現に向けた検討状況を公表
2026年内金融庁銀行発行SCのメリット・デメリット・諸論点を整理
2026年内業界TDについて結論を得て公表
2026年内金融庁AIルールメイキングの在り方を検討・整理
2027年3月省庁横断SCでの給与支払い・納税・出資の取扱い検討
2027年3月デジタル庁給付システムのオンチェーン化検討
2027年3月内閣官房・財務省・厚労省・金融庁GPIF等トークン債投資枠検討
2027年3月PIP3メガバンク共同SC実運用開始を念頭に検討
2027年ADB年次総会(愛知・名古屋)でアジア向け発信

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